こんにちはSAKUです。
今回はドイツワインの13特定生産地域について書いていきます。
前回の分類のクヴァリテーツヴァイン=ベシュティムター=アンバウゲビート(Qualitätswein bestimmter Anbaugebiet:QbA)のところで少しだけ触れたのですが、ドイツにはワイン法で定められた特定生産地域(Bestimtes Anbaugebiete)と呼ばれる産地があります。ここで生産されたワインのみが産地の呼称を許される「正当な」 ドイツワインとみなされます。
13特定生産地域
AHR アール
アール地方はかつての首都ボンの南側に位置しライン川に向かって流れるアール川流域にブドウ畑が広がっています。ドイツでは珍しく生産量の80パーセント以上が赤ワイン品種で「赤ワインの楽園」と呼ばれています。
渋みの少ない赤ワインが特徴的で、ドイツにおける本格的な赤ワインの先駆者ともいえる醸造所Meyer-Nälkelをはじめとして質の高いワイナリーが日々質の向上を切磋琢磨しています。80年代後半以降のワインはヨーロッパ全土においても大変高い評価を受けています。
栽培されている品種 白ではリースリング、赤ではシュペートブルグンダー、ポルトゥギーザ―、フリューブルグンダーが栽培されています。
MOSEL モーゼル

「Deutsches Eck」
樽の上の黒猫、ツェーラーシュワルツカッツでおなじみでドイツ最古の生産地といわれるモーゼル。ドイツ5番目の大きさの地域で、国境の町ペルルからライン川とモーゼル川の交わる「Deutsches Eck」で有名なコブレンツまでの約240kmに及びます。そのため同じモーゼル地方でもさらに6地区に分けられます。
生産されるワインは90%が白ワインでそのうちの60パーセント以上がリースリングです。この地域の生産者の方々はリースリングのスペシャリストと言われています。また観光地、保養地としても有名です。
一般的にキレのある酸味で力強い味わい、熟成とともにまろやかさが際立ってくると評されます。6地区の真ん中ほどに位置するザールという地域では世界で最も高価な白ワインで有名なワイナリーのエゴン ミュラーEgon Müllerがあります。この6地域でも同じ特徴のワインがつくらえているわけではないので飲み比べてみるのも面白いかもしれません。
栽培されている品種 白ではリースリング、ミュラー=トゥルガウ、エルブリング(古品種でゼクトなどに使われる)赤ではシュペートブルグンダーが栽培されています。
RHEINHESSEN ラインヘッセン
ドイツ最大のワイン生産地です。ニアシュタイン(NIerstein) ビンゲン(Bingen) ヴォンネガウ(Wonnegau)の3つの地区に分けられ、マインツ、ビンゲン、アルツァイ、ヴォルムスの4都市の結んだ形をしています。ライン川沿いでは高品質ワインを内陸側では量産用ワインをつくっています。
生産量の70%ほどが白ワインです。ただしリースリングの割合はあまり高くなくミュラー=トゥルガウと同じくらいです。
かの名なワイン「リープフラウエンミルヒ」の発祥はヴォンネガウだそうです。その影響の名残なのか大衆ワインの産地として長らくみられてきました。現在では海外で経験を積んだ若いワイン生産者たちが集まり「メッセージ・イン・ア・ボトル」という団体を発足して新しいラインヘッセンのイメージをつくろうとしています。同じワイナリーのワインでも年代ごとの変化(熟成とは別の意味で)を楽しめる地域かもしれません。
栽培されている品種 白ではリースリング、ミュラー=トゥルガウ、ジルヴァ―ナー赤はドルンフェルダー、シュペートブルグンダー、ポルトゥギーザ―が栽培されています。
NAHE ナーエ
ナーエ地方はライン川沿いの町ビンゲンで合流するナーエ川と支流のグラン川アルゼンツ川流域に広がっています。バート・クロイツナッハという保養地もあり3月から10月にかけては毎週末イベント事が行われるほど観光に力を入れています。
生産量の75%ほどが白ワインになっています。
ラインミッテル地方とラインヘッセン地方ラインガウ地方に隣接していて南西部の中央に位置しているため多種多様なワインがつくられ「ドイツワインの試飲室」と呼ばれたりもします。際立った個性がないとも言えますが・・・
栽培されている品種 白ではリースリング、ミュラー=トゥルガウ、ジルヴァ―ナー赤はドルンフェルダー、シュペートブルグンダーが栽培されています。
PFALZ ファルツ
ラインヘッセンに次ぐ第2位の面積で北部のミッテルハルト(Mittel-haardt)と南部のズードリッヒェ・ヴァインシュトラーセ(Südliche Weinstraße)の2地区に分かれます。アルザスに隣接する町シュバイゲン(Schweigen)にあるドイツワインの門から北のボッケンハイム (Bockenheim)までプファルツ地方を縦断するワイン街道があります。
赤の割合が35パーセントと若干高めです。 90年代より白の辛口が主力となっています。
南のシュバイゲンでは他国からも評価の高い赤ワインがつくられています。全体的にアルコール度数が高くどっしりとした中にフルーティな香りを感じさせてくれます。Friedrich Becker や3Bとして知られるDr. Bürklin-Wolf 、 bassermann jordan、Reichsrat Von Buhlなど日本でもなじみのあるワイナリーが多くあります。
栽培されている品種 白ではリースリング、ミュラー=トゥルガウ、ケルナー、ジルヴァ―ナー、ヴァイスブルグンダー 赤はドルンフェルダー、シュペートブルグンダー、ポルトゥギーザ―が栽培されています。
BADEN バーデン
ドイツ3番目の面積の特定生産地でハイデルベルクからボーデン湖まで細長く伸びています。そして、なんと9つ(!!)の地区に区分されています。 数が多くそれぞれ個性がつよいので分けて書いていきます。
1.タオバーフランケン Tauberfranken バーデン地方の中で最も北に位置し、元々フランケン領に属していたためフランケン地方の独特な形のビン(ボックスボイテル)の使用が例外として認められています。
2.バーディシュ ベルグシュトラーセ Badische Bergstraße シュペートブルグンダーをメインとする赤ワインの産地。酸味が強くフルーティなワインをつくっています。
3.クライヒガウ Kraichgau バーディッシュ ベルグシュトラーセとネッカー川をはさんで対岸に位置します。特徴も似ています。
4.オルテナオ Ortenao ライン川をはさみフランスのアルザスと対面に位置します。温泉で有名な保養地バーデン バーデンからシュバルツバルドのオッフェンブルクに位置します。リースリングの白とシュペートブルグンダーの赤が主力でともに甘口です。アッフェンターラーAffentalerというボトルにサルのしがみついたデザインのワインが有名です。バーデン バーデン郊外の4つの村ではかつてフランケン領だったのでここも例外的にボックスボイテルの使用が認められています。
5.ブライスガウ Breisgau ラールという村からフライブルクまで。グラウブルグンダーとシュペートブルグンダーが主力でこの2種を混ぜてつくられるバーディシュ ロートゴルトBadisch Rotgold とロートリングRotlingが特産で、ロゼワインのような色合いの中にグラウブルグンダ―特有の黄金色の輝きを見せる美しいワインです。爽やかな甘口です。
6.カイザーシュトゥール Kaiserstuhl シュペートブルグンダーが主力でミネラル分に富んだアルコール度数と香りの強いワインがつくられます。シュペートブルグンダーでつくる白ワインであるヴァイスへルブストWeißherbstが特産品です。
7.トゥーニベルグ Tuniberg シュペートブルグンダーの赤とヴァイスブルグンダーの白が主力でカイザーシュトゥールとひとくくりに扱われることが多い。
8.マルクグラフラーラント Markgraflerland スイスの近くになります。固有品種であるグートエーデルやシャルドネの辛口の白が大半です。グートエーデルはドライで果実味のある品種です。
9.ボーデンぜーBodensee 川ではなく湖に面しています。シュペートブルグンダーのヴァイスへルブストがつくられています。
MITTELRHEIN ミッテルライン
ビンゲンからコブレンツに至るまでのライン川流域(ローレライLoreley)とその北部(ジーベンゲビルゲ Siebengebirge)の2つの地区に分けられ、全長約100kmになります。ライン川下りでも有名な世界文化遺産の「ライン渓谷中流上部」などもあり特定生産地の中では一番知名度が高いのではないでしょうか。
生産では白ワインが85%を占めています。
ミネラル分の多い土壌でつくられるためワインにもその独特のフレッシュさが出ています。これがミッテルライン特有の個性であり他の地域では絶対にまねできないところです。観光地化されてしまっているので地産地消されて世に出回らない美味しいワインがいくつもあるのだとか・・・
栽培されている品種 白ではリースリング、ミュラー=トゥルガウ 赤ではシュペートブルグンダーが栽培されています。
HESSISCHE・BERGSTRASSE ヘシッシェ・ベルグシュトラーセ
特定生産地の中で最も小さいです。シュタルケンブルク(Starkenburg)とウムシュタット(Umstadt)の2つの地区からなります。温暖で3月ごろからアーモンド、桃、さくらと美しい景色を見れることで有名で中心のベンスハイムは「ワインと花の街」として有名です。
生産は白ワインが80%を占めています。
ふくよかな風味のワインが特徴で辛口、中辛が多く評価も高いのですが生産量が少ないためあまり市場で見かけることはありません。
栽培されている品種 白ではリースリング、グラウブルグンダー、ヴァイスブルグンダー、ジルヴァ―ナー 赤ではシュペートブルグンダーが栽培されています。
RHEINGAU ラインガウ
フランクフルトの西側ウンターマインからリューデスハイムの北側までの横に長い地域です。ライン川もここで蛇行して東から西へ流れます。ヨハニスベルクという1地区のみで構成されています。醸造所のschloss johannisbergが有名です。
栽培の85%以上が白品種でリースリングほとんどがとなっており、ドイツではモーゼルと双璧をなす生産地と言えます。 トロッケンベーレンアウスレーゼをつくるのに適した土地でフランスのシャトー・ディケムと肩を並べる高品質の貴腐ワインを生産しています。甘さと酸味のバランスのとれた素晴らしいワインが多くつくられています。
また、2003年に日本の固有品種「甲州」が移植され、2005年にファーストヴィンテージがつくられ、2015年より欧州向けに販売を開始されました。
栽培されている品種 白ではリースリング、赤ではシュペートブルグンダーが栽培されています。
FRANKEN フランケン

ボックスボイテル
バイエルン州の北部のフランケン地方のマイン川流域でシュタイガーバルトSteigerwald、マインドライエック Maindreieck、マインフィアーエック Mainviereckの3地区に分かれます。
白ワインがが80%以上を占めています。
ゲーテが愛したワインとしても有名で、ボックスボイテルと呼ばれる個性的な瓶に入ったコクのある鋭い辛口ワインが伝統的につくられています。その味から「男のワイン」と呼ばれることもあります。ドイツワインと言えば甘口というイメージで長らくワイン通にしかフォーカスされてきませんでした。最近の辛口指向で若手生産者たちはフランケンの辛口の代名詞ともいえる品種のジルヴァ―ナを再び第一品種に(今はミュラー=トゥルガウ)復活させようとしているそうです。
栽培されている品種 白ではミューラー=トゥルガウ、ジルヴァ―ナ、バッフス(リースリングとジルヴァ―ナの交配種)、リースリング、赤ではシュペートブルグンダーが栽培されています。
Württemberg ヴュルテンベルグ
ネッカー川流域にあるドイツ南部の地方で6地区に分けられます。
バーデン、アールと同じく赤が多く70%弱を占めています!!
酸味が強くどっしりとした味のトロリンガーが好んで使われることが特徴的です。また、ここでつくられる混合ワインのロートリングは詩人のフリードリヒ=フォン=シラー(Friedrich=von=Schiller)にちなんでシラーヴァインSchillerweinと呼ばれます。
栽培されている品種 白ではリースリング、赤ではトロリンガー、シュバルツリースリング、レンベルガ―、シュペートブルグンダーが栽培されています。
Sachsen ザクセン
エルベ川沿いをドレスデンの西側と東側に広がる生産地です。マイセンMeißenとエルスタータールElstertalという2地区に分かれます。
白ワインが80%以上を占めています。
香りもコクもしっかりしてはいるが薄口のあっさりタイプが主流。ゴールドリースリングはこの地域の特産なので試してみる価値あり!!
栽培されている品種 白ではミューラー=トゥルガウ、ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、リースリング、ゴールドリースリング(リースリングとクルティエレの交配種)赤ではシュペートブルグンダーが栽培されています。
Saale Unstrut ザーレ ウンストルート
ザーレ川とウンストルート川の周辺に広がる生産地で、マンスフェルダー ゼーエンMansfelder Seen 、シュロス ノイエンブルグSchloß Neuenburg 、テューリンゲンThüringenの3地区に分けられます。
白ワインが70%以上を占めています。赤は少ないですが人気があり売り切れになることが多いようです(現地でしか買えないですね)。
他にも少数ながら30種以上の品種を栽培しているらしいので、ワイナリー巡りが面白そうな地域ですね。 北のほうにあるのでザクセン同様に糖度が上がらず酸味のあるあっさりしたワインに仕上がります。ですが、熟成もゆっくり進むので味のバランスの取れたいいワインとも言えます。
栽培されている品種 白ではミューラー=トゥルガウ、ジルヴァ―ナ、リースリング、バッフス、ヴァイスブルグンダー 赤ではポルトギーザー、ドルンフェルダーが栽培されています。
今回は生産地域について簡単に書いていきました。今後は生産地域ごとのおすすめのワイナリーも紹介していきたいと思います。ドイツワインの辛口は和食との相性も抜群にいいので是非試してみてください。
以上SAKUでした!!